令和5年(2023年)7月21日、本学客員教授で国際政治学者の村田晃嗣先生(同志社大学法学部教授)による対面特別講義「ウクライナ情勢と日米関係」を実施しました。
まず、台湾のTSMCが熊本に半導体生産拠点を置くことに触れられ、「このことは、今日お話しする国際情勢とも関係があり、国際政治の大きなドラマの中の一コマとして認識する必要がある」というメッセージから本題に入られました。
今夏に公開されたウクライナの監督作品「キャロル・オブ・ザ・ベル」という映画を踏まえて第2次世界大戦中のウクライナ(当時はポーランド領)の情勢やその後のポーランドやソ連の歴史について御説明いただき、「今回のロシアによるウクライナ侵攻は、プーチン大統領が“20世紀地政学上最大の悲劇”と言っているソ連崩壊、その前に歴史のネジを巻き返そうとする試みであるということは言えると思う」との見解を述べられました。
更に、「我々が目の当たりにしているのは、いわば、“核拡散防止条約(NPT)に加盟し1994年のブタペスト覚書で自発的に核兵器を放棄することにした国(=ウクライナ)が、その国を守ると言った核保有国(=ロシア)に攻撃されている”という事態」であり、「日本がこのような事態を受け入れてしまうと戦後訴えてきた核兵器のない世界は絶対に実現しない、つまり、戦後日本外交が提起してきた規範に対する挑戦だと言わざるを得ないだろう」とも語られました。
加えて、日米関係についてだけでなく、中国や台湾、インドの情勢についても様々な視点からエピソードを盛り込んでいただき、最後に、「一番難しい課題は、今回の休戦に至るとき、ロシアを国際社会にどのように受け入れるのか。国際安全保障理事会の常任理事国として拒否権を持ち、約6,000発という世界で最も多くの核弾頭を所有するロシアを国際社会の孤児として残しておくわけにはいかないでしょう」とあり、「国際政治上の本当の激動は来年やってくる。1月は台湾総統選挙、3月はロシア大統領選挙、4月は戦火の中でウクライナ大統領選挙、9月は日本の自由民主党総裁選挙、そして11月5日はアメリカ大統領選挙。こうしたことも意識しながら、長期的な視点に立って、我々何が出来るのかを皆さんと一緒に考えていきたい」と締めくくられました。
なお、今回の対面特別講義は、全学共通科目「現代社会と政治」の1コマとして、当該科目履修者全員にオンデマンド配信されました。