変革の時代、新たな扉を開ける卒業生
挑戦する姿を通し、勇気や希望を
ミス・インターナショナル日本代表 植田 明依さん
グローバル化がますます進展し、さまざまなレベルで競争が増し、大きな変化の時代を迎えています。そんな変革の時代に、世界に向けて挑戦し続ける熊本県立大学の若き卒業生がいます。
昨年11 月28 日、東京都内で開催された「2024 ミス・インターナショナル日本代表選出大会」で、卒業生で高校教員の植田明依さんが日本代表に選ばれました。「地域に生きる、世界に伸びる」という本学のスローガンを体現し、熊本の地から世界に向けて、新たな扉を開けようとする植田さん。「挑戦する姿を通してもっと多くの人に勇気や希望を与えたい」と抱負を語ります。
対談:活躍する卒業生×学長
自分でリミットをつくらない! “挑戦”が未来を引き寄せる
「2024ミス・インターナショナル日本代表」に選ばれた植田明依さんは宇土市の出身で、2021年3月に環境共生学部食健康科学科(現・環境共生学部環境共生学科食健康環境学専攻)を卒業。
熊本県内の高校で家庭科教員として働きながら大会へ挑戦し、教員とモデル活動を両立させています。
この春には一旦教員を退職し、世界大会に向けて準備を進める予定です。
生徒に“挑む姿”を見せたかった
学長 まずは、おめでとうございます。ミス・インターナショナル日本代表に選ばれたときのお気持ちは?
植田 ありがとうございます。素直にとてもうれしかったです。それと同時に、長い間切磋琢磨してきた仲間たちの思いを背負う覚悟も芽生えました。
学長 切磋琢磨してきた仲間というのは?
植田 日本大会に出場したファイナリストの皆さんです。書類審査を通過した人を対象にオーディションが開催され、日本大会への出場者32人が選出されました。そのメンバーと共に、9月から東京で実施された「ビューティーキャンプ」というセミナーに参加し、ウォーキングやスピーチのレッスン、先輩の特別講話などを受けることができました。私は教員の仕事があるので、約2ヵ月の間、週末に熊本から通っていました。
学長 それは大変でしたね。でも自分磨きは自分次第ですからね。
植田 そうですね。後で調べたら、東京と熊本の往復が16回に及んでいました。熊本でも、個人的に体のケアやウォーキングレッスンを受けて準備をしていました。
学長 ミス・インターナショナルに挑戦するきっかけは何だったのですか?
植田 勤務先の高校で、生徒から「先生、モデルになったらどうですか?」と言われたとき、「無理だよ~」と軽く受け流してしまったんです。それが自分の中でとても悲しくて。教員もやりたかったのですが、以前からモデルなどの活動もやってみたいと思っていましたから。生徒たちが頑張っているのに、教壇に立つ私が自分の可能性に蓋をするのは良くない、変わりたいと思っていたとき、「ミス・クマモトに出てみないか?」と声をかけていただきました。2023ミス・クマモトに選ばれた後、挑戦する姿を通してもっと多くの人に勇気や希望を与えたいという気持ちが高まり、ミス・インターナショナルへの出場を決心しました。
学長 お兄さんは、ベルギーのサッカーチームにも所属していたJリーガーの植田直通選手と聞きましたが、その影響もあるのですか?
植田 やりたいことに挑戦する兄に影響された部分もありますが、やはり生徒たちと過ごしてきた時間が、私の背中を一番押してくれましたね。
学ぶことを諦めなかった大学生活
学長 植田さんのニュースを聞いたときは、「うちの卒業生が!?」と大変驚きました。熊本で生まれ育って、管理栄養士の資格を取り、家庭科教員として働いていると聞いて、さらに驚きました。先生方にお尋ねしたら、「在学中はリーダー的なまとめ役だった」そうですね。学生時代はどうでしたか? 食の分野は、かなり勉強しなければならなかったと思いますが。
植田 私は幼い頃からバスケットボールをしていて、高校も体育コースでした。大学は推薦入学でしたし、基礎しか勉強していなかったので、入学当初は講義についていくことができず泣きながら授業を受けていました。
学長 食に関連する科目は、生物学、化学が分からなかったら苦労しますよね。
植田 はい、大変でした。でも周りに同じ資格の取得を目指している友人が多かったので、一緒に頑張ることができました。
学長 スポーツをやっていたことで、精神も鍛えられていたからじゃないですか?
植田 それもありますね。
学長 今持っている資格は、管理栄養士と家庭科教諭の免許ですよね?
植田 はい。それと栄養教諭の免許を持っています。
学長 学生時代は、アルバイトもやっていました?
植田 一時期やっていましたが、辞めて勉強に力を注ぐことにしました。
学長 その時間が、植田さんの今をつくり上げたのだと思います。「少年老い易く、学成り難し」です。時間は取り戻せませんから。私は67歳にもなるのに、いまだに学問を追いかけています(笑)。
人間力が問われるグローバル社会
学長 ところで、世界大会はどこで開催されるのですか?
植田 東京都内で開催されます。
学長 日本での開催ですか! それはプレッシャーですね。
植田 でも、大会前の2週間は皆で共同生活を送るので、日本の良さをPRできますし、応援にも来てもらいやすいので嬉しいです。
学長 植田さんは食に詳しいから、日本の食べ物についてもPRできるのでは?
植田 そうですね、日本独自の食文化についても伝えたいと思います。
学長 食べることは生活の基本ですから、その知識があるのは素晴らしいこと。大会では、教養的、内面的な点が評価されるんですよね? つい期待してしまいます。
植田 教養的、内面的な点は大切ですね。しかし、大会期間中のコミュニケーションはすべて英語になるので今勉強しているところです。
学長 ぜひ英語は頑張っていただきたいです。県立大学では、学生のTOEIC〇の受験料を支援して、英語力のアップを促しています。学生たちには折に触れて「英語を学びなさい」と伝えていますが、学びを強制したくはない。自らやる動機や向上心がないと、なかなか上達しませんから。しかし先輩が英語でスピーチをする姿を見たら、感化される学生が出てくるかもしれません。
植田 学生の皆さんに刺激を与えられるよう、頑張ります。
学長 この大学に通って良かったことや、今役立っていることはありますか?
植田 管理栄養士の資格を取ったこと、4年間学んだこと、すべてですね。思い描いていた学生生活とは違って、楽しいというよりは大変なことの方が多かったのですが、今は勉強で苦労して良かったと思います。人生で国家資格を取る機会はそうありませんし、皆で頑張れましたし。
学長 在学中は松本直幸先生の研究室だったそうですね。何を研究していたのですか?
植田 運動生理学です。運動したときに体の中がどう動いているか、乳酸の測定などを行っていました。個人では、睡眠と運動の関連性について研究していました。もともと、スポーツ栄養士になりたかったんです。この大学も、松本先生の研究室に入りたくて選びました。
学長 植田さん自身は、自分をどんな学生だったと思いますか?
植田 先生方や友人を頼って、とにかく勉強に時間を費やした学生でした。またクラス委員を務め、学園祭では食品販売の運営にも携わっていろいろな経験ができました。
誰もが可能性の扉を開けられる!
学長 後輩へのメッセージはありますか?
植田 一番伝えたいことは、「年齢や環境に関わらず、自分次第でいつでも人生は切り開ける」ということ。自分の可能性を信じ限界に蓋をせず、いろいろなことに挑戦してほしいです。
学長 人は自分で限界をつくってしまいますからね。
植田 私の場合、教員にもなりたかったので就職しましたが、「もう就職したし、年齢も年齢だし」と、他のことを諦めているところがありました。でも今回のような挑戦をする中で、そんな諦めは必要ないと感じました。
学長 そうです、必要ありません。この大学では、英語を学ぶことに加えて、データサイエンスの科目を必修にしています。文系の学生が統計を学ぶのは大変ですが、必要最低限理解しておいた方がいい。今勉強したら、きっと理解できるようになります。私自身は、必要に迫られて英語を勉強しました。しばらくは全然進歩がないと感じていましたが、ある日突然理解できるようになりました。皆さんも、諦めずに続けてみてほしいです。
植田 私も諦めずに勉強します。
学長 世界大会への意気込みはいかがですか?
植田 優勝するために、しっかりと準備をしていきます。また、日本での開催ですので、日本の良さをたくさんの人たちに知ってもらいたいと思っています。
学長 日本は、他のアジアの国とは違う珍しい染色体の変異パターンがあると言われています。遺伝子解析の面から考えると、日本独特の感覚やセンスがあるのかもしれません。島国であることも、二千年、三千年の歴史を支えている理由のひとつです。世界大会に向けて、英語のスキルアップの他にどういった準備をするのでしょうか?
植田 年間を通して茶道や華道を習い、日本の歴史や文化についても学んでいきます。またウォーキングやスピーチのレッスンも続けていきます。大会では、民族衣装の審査もあるので、そちらもどんなものにしようかと思案中です。
学長 着物ですか?
植田 はい。世界各国のミスが、さまざまなテーマで華やかに民族衣装を着こなしますので、私も日本の良さを出しながら、よりアピールできるように工夫できればと思います。
チャンスを生かして、その先へ
学長 今後の活動拠点は東京ですか?
植田 世界大会が11月に開催されますので、4月から東京で準備を進める予定です。
学長 家庭科教員との両立についてはどうですか?
植田 今後も教育に携わりたい気持ちはありますが、せっかくこのようなチャンスをいただいたので、教員を一旦退職して世界大会の準備に集中します。私の挑戦に協力していただいた職場の方々には、本当に感謝しています。もともとスポーツ栄養学について学びたかったので、東京ではその勉強もする予定です。それをまた教育現場で還元できたらいいなと考えています。高校では「私もがんばろうと思いました」と声をかけてくれた生徒がいて、自分の挑戦から何か伝わっているのかなと感じているところです。最近は、「何歳になっても、やりたいことがあるなら挑戦していいんだよ」と伝えるようにしています。
学長 あまりプレッシャーをかけてはいけませんが(笑)、大学の誇りです。頑張ってください。在学生や卒業生が輝いてくれるのはうれしい限りです。結果は後で付いてくること。一生懸命やることが大事です。
植田 はい。挑戦の過程に意味があると思っているので頑張ります。
学長 この経験ができるのは、日本であなたただ一人です。せっかくですから、たくさん楽しんでください。
植田 はい、楽しみます。そして大会でも結果を残してきます!