同志社大学 村田晃嗣客員教授による特別講義を開催しました
令和元年(2019年)12月2日(月)、午前10時20分より中講義室2において、本学客員教授で国際政治学者の村田晃嗣先生(同志社大学法学部教授)にお越しいただき、特別講義を行っていただきました。
講義に先立ち、本学の名誉教授であり比較政治論を担当されている松岡泰先生から、村田先生のご略歴や同志社大学と熊本の繋がり等について紹介がありました。
村田先生は、「米中対立と日本」と題して、まず、ベルリンの壁の倒壊と東西冷戦の終結から30年程がたち、日本は2回目のオリンピックや万博を迎えることになるが、この間に日本が次のビジョンを描き切れないと厳しい状態に陥る可能性が高いとの認識を示され、故堺屋太一氏の話を例に、明治以降、強い日本から豊かな日本となり、次は楽しい日本と言われたが、それは文化大国のことでありそのためには、ある程度強く、豊かでないと難しいが、今後急激な人口減少が日本には迫っていることを東京や九州の人口を例に説明され、それに伴う国力の減退と施策の優先順位について話をされました。
次に、米国の次期大統領選挙に関して話をされ、景気や失業率等の数値が良く現職有利の要素もあるが、米国の特徴は議会が極めて強い力を持っており、上院は2年おきに3分の1が改選されるので、仮に現職大統領が再選されても上院、下院で民主党が過半数を占めることになると厳しい政権運営を迫られることが見込まれることについて触れられ、そのような中、米国は中国に対し莫大な貿易赤字に陥っており、中国から米国の企業への投資に対し規制をしたり、大学の最先端の研究の流失を防ぐため、学生ビザの発給を厳しく審査しており、貿易だけでなく投資、人的交流等にも踏み込んでいる首都ワシントンの対中国に対する姿勢について知見を述べられました。
今後、2030年から2040年にかけて中国は国力が強大になる一方、人口減少の問題も差迫っており、中国が人口減少に飲み込まれるのか、科学技術の革新によって人口減少を凌ぐ力を得るのかといったことが世界を動かしている大きな力になっているとの考えを述べられました。また、日本と韓国をめぐる問題についても地理的、歴史的要因も含め複数の理由をあげられ、最後に、日本は今後日本を取り巻く外交・国際問題について能動的に考えていくことが重要になってくるとの見解を述べられ講義を締めくくられました。受講した学生からの質問にも丁寧に対応いただき、200名近い受講者にとって各自の将来に向けて日本を取り巻く国際関係や日本の置かれた状況を考えるうえで貴重な機会となりました。